熟睡できない原因はプレ更年期かも?おすすめ睡眠グッズと漢方も紹介

30代後半になり、熟睡したいのに寝付くまで時間が掛かる…。夜中に目が覚めてぐっすりと眠れない事が増えているのはプレ更年期のせい?この記事では、このような大人の女性の睡眠の悩みについて、睡眠専門家が解決策をご提案します。

 

著者情報

内藤絢

睡眠栄養指導士

エアロビクス講師、ヨガインストラクター、食育指導士、ダイエット指導などの経験を経て、現在は睡眠の専門家として活動している。運動、食事、睡眠という、生活の基本全ての指導経験を持つのが強み。

睡眠に関連する商品の監修(アイマスク、睡眠アプリsheep、サプリメント)、企業研修、ミセスコンテストビューティーキャンプ講師など活動は多岐に渡る。

目次

熟睡できないのはプレ更年期かも?アラフォー女性の睡眠事情

近年、女性の社会進出が進むと共に、満足のいく睡眠が取れないアラフォー女性が増えています。アラフォー女性の睡眠の質が低下するのには、以下のような理由があります。

プレ更年期障害の症状の一つ

30代後半〜40代半ばは「プレ更年期」と呼ばれる時期で、閉経に向けて女性ホルモン(特にエストロゲン)の分泌量が徐々に減ってくるため、人によっては心身の変化が生じ始めます。更年期障害と同じような症状が出る事もあり、これをプレ更年期障害と言います。

一般的には35歳を過ぎると卵巣内にある卵胞の数が少なくなり、卵巣機能が低下します。そのため、女性ホルモン「エストロゲン」の分泌量も減少し、自律神経のバランスが乱れ、就寝時も交感神経が優位になり、入眠困難や中途覚醒を起こしやすくなります。

プレ更年期障害の主な原因は、過労、ストレス、無理なダイエット、栄養バランスの乱れなどが挙げられます。生活習慣を見直す事で症状が緩和されたり、熟睡できる身体を作りやすくなります。

栄養不足で睡眠に必要なホルモンが分泌されない

睡眠には、セロトニンやメラトニンというホルモンの分泌が関係しています。メラトニンは別名「睡眠ホルモン」と呼ばれ、睡眠を促す働きをするホルモンです。セロトニンは別名「幸せホルモン」と呼ばれ、気分や感情をコントロールして心の安定を保つ脳内ホルモンで、メラトニンの元になります。

セロトニンの材料として必須アミノ酸のトリプトファンが必要となりますが、トリプトファンは体内で生成できないので、食事から摂らなければなりません。食べ物から摂取したトリプトファンは、日中は脳内でセロトニンに変化し、夜になるとメラトニンに変化します。

日中は脳内でセロトニンに変化し、夜になるとメラトニンに変化します

さらに、トリプトファンがセロトニンやメラトニンに変化して行く過程で、補酵素に鉄分が関与しています。そのため、トリプトファンと鉄分が不足すると、不眠症や睡眠の質の低下を引き起こす原因になります。

アラフォーになると、加齢による胃液分泌の低下や、栄養吸収の低下なども起こり、上記のような睡眠に必要な栄養が不足しやすくなります。

熟睡できない日が7日以上続くと要注意

熟睡できず、睡眠の質が低下する期間が長くなるほど、さまざまな問題が出てきます。熟睡できない期間によって、どのような症状が出てくるかを解説します。

1週間から1ヶ月

自律神経が乱れて交感神経が優位になり、入眠が難しくなります。全身の冷えや浮腫みを感じ、三半規管も乱れて目眩、ふらつきが起こりやすくなります。

1ヶ月から半年

ホルモンバランスの乱れにより、成長ホルモンの分泌量が減少します。肌荒れやアレルギー発症、抜け毛や白髪が増える、代謝低下、肥満などの症状が出て、老化が進みます。

半年以上

セロトニンの分泌量が大幅に減少してメラトニン分泌が滞り、浅い眠りが続きます。脳の老廃物が蓄積されて物忘れが増えるようになります。その他、メンタルが不安定になりイライラしやすくなり、気持ちが焦ってケアレスミスが増えるなど、家事や仕事をする上で支障が出る事もあります。

熟睡できず、日中に倦怠感や頭の重さなど生活に支障が出る事が1ヶ月以上続く場合は、睡眠外来での受診をおすすめします。

今日から熟睡するためにできること

毎日の生活の中で、熟睡するために必要な事を紹介します。

睡眠をサポートする食事

腸内環境を整える発酵食品を積極的に摂る事と、睡眠に必要な栄養素を摂るようにしましょう。

腸内環境を整える発酵食品を摂る

脳腸相関と言う言葉があるように、脳と腸は深く関係しています。スムーズな入眠を促すメラトニンの元「セロトニン」の90%が腸内にあると言われています。そのため、腸内環境が悪くなると、セロトニンの分泌量が減少すると共にメラトニンの分泌も滞り、熟睡を妨げてしまいます。

セロトニンの分泌量が減少すると共にメラトニンの分泌も滞り、熟睡を妨げてしまいます

毎日の食生活で無理なく腸内を整えるには、発酵食品を積極的に摂るのがよいでしょう。例えば、味噌汁、納豆、ぬか漬けなどは、乳酸菌やビフィズス菌、酵母菌、麹菌など多くの善玉菌が含まれ、腸の動きを活発にします。

睡眠に必要な栄養素を摂る

睡眠には、鉄分とトリプトファンを摂るようにしましょう。

トリプトファン

セロトニンはトリプトファンという必須アミノ酸から作られます。トリプトファンは、食品中のたんぱく質に含まれています。チーズ・牛乳・ヨーグルトなどの乳製品、豆腐・納豆・味噌・しょうゆなどの大豆製品、ナッツ類、その他、ごま、卵、バナナにも含まれています。

今日から熟睡するためにできること 睡眠に必要な栄養素を摂ること
鉄分(ヘム鉄)

セロトニンを作る上で欠かせない栄養素である鉄分も合わせて摂るようにしましょう。鉄分には体内で吸収されやすいヘム鉄と、吸収率が少ない非ヘム鉄の2種類があります。セロトニン生成の促進には体内で吸収されやすいヘム鉄を摂りましょう。

ヘム鉄が豊富に含まれる食品の中には、しじみやあさりがあります。朝食でしじみやあさりの味噌汁を摂るとセロトニンとメラトニン生成が促進される事が期待できます。この他ではまぐろの赤身、いわしの丸干し、豚や鶏のレバーにも多く含まれています。

鉄分(ヘム鉄) 豚や鶏のレバーにも多く含まれています

腸内環境を整え、トリプトファンと体内吸収率が高いヘム鉄を摂る事で、セロトニンの生成を促すと共にメラトニン分泌も促進されて熟睡しやすくなります。

体内時計が整う生活リズムを作る

太陽が昇ると活動的になり、夜になると眠くなるように、人間の身体は光のリズムと同じように反応します。このリズムが崩れると、睡眠の質が低下します。生活リズムを整えるポイントをいくつか紹介します。

平日と休日の起床時間の差を2時間以内にする 

起床時間が大幅に変わると、日光に当たる時間が減り、さらに食事時間が変更する事で消化活動の時間が異なるなど、通常のリズムが崩れて体内時計が乱れます。

週末の寝溜めは控える

週末の寝溜めも体内時計が乱れる要因です。一回の寝溜めで体内時計が戻るまでは丸3日も掛かると言われています。休日は日頃の疲れを取りたいから眠りたいという人は、平日と同じ時間に一度起床して、日光を浴びて、朝食を摂った上で、眠るようにしましょう。

起床時、食前、就寝前に白湯を飲む

コップ1杯分で、60℃前後の温度の白湯を飲むようにしましょう。白湯を飲むと休息していた内臓が緩やかに動き出し、血流が促進されます。すると、全身の代謝が上がり、消化が促進されます。朝は目覚めが良くなり、夜は副交感神経に刺激が入り、スムーズな入眠を促す事に繋がります。

睡眠の専門家がおすすめする睡眠サポートグッズ

毎日の睡眠をより良質なものにする、睡眠サポートグッズと漢方を紹介します。

ホットアイマスク

スムーズな入眠を促すためにホットアイマスクを利用するケースが多く見られますが、中でも蒸気タイプの商品がおすすめです。

目が疲れていると交感神経が優位になり、脳が休めず、眠りが浅くなります。特に近年ではスマホ、パソコンで目を酷使する事で目の周りの筋肉が固まり、眼精疲労によって寝付きが悪くなる方も多く見られます。ホットアイマスクで目の周りの筋肉を温めると、脳の緊張も和らぎ、副交感神経が優位になり、入眠がスムーズになります。

精油(100%エッセンシャルオイル)とアロマランプ

100%の精油の芳香浴で香りが自律神経の中枢である「視床下部」に届くと、脳と身体の緊張がほぐれてリラックス効果が高まります。中でもラベンダーとオレンジの香りがおススメです。ラベンダーには、ストレス緩和、イライラの鎮静、胃腸の動きを良くする効果が期待できます。オレンジには、消化機能の向上、血行促進による熟睡効果が期待できます。

 

精油の香りはメーカーや採取した時期により異なるため、実際に商品の香りを確認してから購入するようにすると良いでしょう。アロマランプを使って芳香浴をすると、電源を入れるだけで使用できる上、安全性の高いのでおすすめです。

漢方薬 加味逍遥散(かみしょうようさん)

不眠症の他、睡眠の質と深く関わる冷え性や女性ホルモンの変動で現れる気持ちの焦りを解消する効果が期待できると言われる漢方です。特に35歳からのホルモンバランスの乱れを整える効果が期待できるため、プレ更年期障害の症状で熟睡できない女性にはおすすめです。

睡眠の質は毎日の過ごし方で決まる

30代前半から後半に差し掛かるとホルモンバランスが乱れやすくなり、熟睡ができない女性が増えてきます。そんな時は、睡眠に必要な栄養素は摂れているか?体内リズムが乱れるような生活をしていないか?など、ご自身の食事や生活習慣を見直してみましょう。

ホルモンの揺らぎ時期に入るため、漢方を使ってみたり、睡眠をサポートするグッズも上手く活用して、毎日スッキリした気分で朝を迎えられるようにしましょう。

参考文献

<書籍>

自力で免疫力を揚げる腸の強化書決定版(宝島社)藤田 紘一郎

働く人の疲れをリセットする快眠アイデア大全 誰にでも効く光×体温、脳のアプローチ(翔泳社)菅原 洋平

e-ヘルスネット 女性の睡眠障害

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