昨今のウイルス対策でマスク生活が当たり前になり、顔の下半分のたるみが気になるという方がとても増えています。この一年で顔のたるみに悩む方が3倍に急増したと言われています。
そこで今回は、マスクでたるみが起きるワケ、30代後半から心地よく過ごすためのたるみやアンチエイジングに効くツボをご紹介します。
著者情報
田中明緒
鍼灸師/ ヴィーガン料理研究家
生まれつき重度のアトピー性皮膚炎と食物アレルギーを改善した経験を活かし、東洋医学、マクロビオティック、ローフード、自然農法を学び、料理教室を開業。鍼灸師としても活動。
鍼灸施術、料理教室、レシピ開発、お料理撮影、執筆、モデルなど活動の幅は多岐に渡る。
【著書】
「薬膳 Vegan healing recipe」(キラジェンヌ出版)
マスクで顔がたるむワケ
たるみとは、皮膚の下の皮下組織と脂肪の減少によって、皮膚が下がるという症状です。
顔のたるみの原因を見ていきましょう。
加齢
顔のたるみは加齢によるものが大きいです。20代〜30代前半の肌は、皮膚と表情筋を密着させる線維組織(コラーゲン)が引き締まっているためにハリがあります。しかし35歳を過ぎた辺りからこの線維組織が衰えて緩み、人によっては数ミリ単位で隙間ができてしまうことから、皮膚を支えきれなくなりたるみが出てきます。
舌の位置がずれる
たるみには舌の状態も関係しています。舌の正しい位置とは、口を閉じた時に舌先が前歯の裏側に収納されていることです。会話が減ると口の中の運動量も減るため、舌が下がって正しい位置からずれてしまい、たるみを引き起こす原因になります。
表情筋が弱る
マスクをつけて自粛を強いられる状況では、人と会話をする機会が減る上、マスクで顔が覆われていることで、表情が乏しくなります。すると、顔の表情筋が弱り、たるんでしまうのです。
顔は大小30以上の筋肉でできており、それが複雑に関わり合って表情を作っています。特に口元周りは顔の筋肉の7割を占め、また口元の筋肉は柔らかく、大部分は骨についていないため動かしにくいです。意識して動かさなければ、口呼吸になり、たるみの原因になります。
表情筋は、表層筋と深層筋の2種類に分かれています。表層筋とは皮膚に近い部分の筋肉で、マッサージなどでケアができます。それに対して深層筋はマッサージではなかなかほぐすことができず、コリやすいです。深層筋のコリ固まった筋肉は衰えるだけでなく、顔を横に大きく見せてしまいます。
さらに、無表情になることでリンパの流れも滞り、たるみが目立つようになります。
ツボ押しがなぜ即効性があるのか
ツボは目には見えませんが、世界保健機関に361穴のツボがあることが認められています。神経や血管がたくさん集まって交差している位置にツボは存在し、ツボに刺激を与えると、感覚神経が興奮します。
その興奮は脳に伝わり、脳から自律神経系や免疫系、内分泌系に関するメッセージが送られることで、血行促進や免疫力アップなどの健康に結びつく様々な効果があると言われています。
さらに、最近はツボ押しの効果による新たな事実も発表されました。ツボ押しなどで体の外から刺激を与える事で、細胞のミトコンドリアが活性化されることが分かってきています。免疫力アップだけでなく、代謝の促進による美肌にも有効です。
鍼の場合は専門技術が必要ですが、ツボ押しであればツボの位置とコツを覚えてしまえば、誰でも簡単にできます。ツボを押して不要な水分や老廃物をスムーズに流すことで血液やリンパの流れが促され、肌の新陳代謝が活性化されます。顔のむくみやたるみが解消され、筋肉のコリもほぐれてくるので、小顔効果も期待できます。
ツボ押しのコツ
特別な道具は必要なく、誰でも手軽にできるのがツボ押しの魅力です。肌を傷つけないように押す力の強さにさえ気をつければ、こうでなければダメという決まり事もありません。あとは、ツボを押した時の自分の体の声に耳を傾けてあげることも大切です。それではツボの押し方を見ていきましょう。
押す強さ
ツボを押す時は、皮膚に対して指の腹が垂直になるように置き、「イタ気持ちいい」と感じる程度の強さで、爪を立てないようにして指の腹で押します。
ほどよい刺激で気持ちよいと感じることが大切です。気持ちよいと感じることでリラックスを司る副交感神経が活発になり、血流の循環が良くなります。あまり強く刺激すると、揉み返しが出る場合もあるので注意してください。
押すタイミング
深呼吸をしながら息を吐くタイミングでゆっくり押します。一回の押す時間は5秒程度で、それを4〜5回繰り返します。あまり強く押すと、爪で皮膚を傷つけたり、筋肉を痛めてしまうことがあるので気をつけてください。
もう少し刺激が欲しい場合は更にゆっくり円を描くように刺激するのもおすすめです。不調な場所ほど、刺激すると硬かったり、痛いことがあるため、毎日ツボ押しをする事で少しづつ変化を感じるようになります。
顔のたるみに効くツボ
頬の筋肉を引き上げているのは、表情筋と側頭筋という筋肉です。この筋肉が弱ると、上に乗っている脂肪や繊維が下がり、たるみやハリのないどんよりした顔になってしまいます。
顔のたるみに効果的なツボを紹介します。
巨髎(こりょう)
巨髎(こりょう)の位置
黒目を基準として、そのまま指を下げていくと頬骨に突き当たりますが、頬骨の高い部分の下にあるツボです。小鼻の横のラインと、黒目の縦のラインが交わったところにあります。
巨髎は、たるみやシワを解消するツボです。
「髎」という漢字は骨の隙間を意味しますが、この「巨髎」を刺激する事で、顔全体に栄養が行き渡りやすくなり、肌のくすみやたるみの解消に繋がります。さらに鼻づまりなど、鼻に関するトラブルを抱えている人にもおすすめしたいツボです。
散笑(さんしょう)
散笑(さんしょう)の位置
小鼻から口角まで引いた線の中央にあるツボです。
ここには口輪筋・口角挙筋・小頬骨筋頬があるので、優しく指圧することでほうれい線、頬のたるみ、むくみ、口角を上げるのに有効です。
頬車(きょうしゃ)
頬車(きょうしゃ)の位置
フェイスラインの角ばった部分から指1本分耳の方に移動した少しへこんだ箇所で、グッと力を入れて歯を食いしばった時に、筋肉が盛り上がる位置です。
フェイスラインをすっきり見せたい時は、水分代謝を促してくれる頬車のツボ押しがおすすめです。
両手の中指で左右のツボをそれぞれ押します。
率谷(そっこく)
率谷(そっこく)の位置
耳の一番高い部分から指幅2本分ほど上にある谷のように凹んだ位置にあります。
率谷の「率」には巡るという意味があります。顔のたるみは、こめかみから耳の後ろの側頭筋がたるむことでも起こるため、率谷のツボを親指で押しながら指を引き上げると、側頭筋がストレッチされ、顔全体のたるみを解消できます。
また、このツボは頭の血流を促進するので頭をすっきりさせる効果があり、片頭痛などの時にもおすすめです。
ほうれい線が気になる時に押すツボ
ほうれい線が気になる方におすすめのツボを紹介します。
巨髎(こりょう)
巨髎(こりょう)の位置
黒目を基準として、そのまま指を下げていくと頬骨に突き当たりますが、頬骨の高い部分の下にあるツボです。小鼻の横のラインと、黒目の縦のラインが交わったところにあります。
顔のたるみの部分でも紹介した巨髎のツボ押しは、頬の乾燥や、乾燥によるほうれい線の目立ちが気になる時におすすめです。血流が行き届くようになるため、くすみも取れます。
人差し指、中指、薬指を揃えて指の腹でツボの周辺を上へ優しく押さえ、押し上げるように3~5回押します。
下関(げかん)
下関(げかん)の位置
目尻と耳の穴を結ぶラインの真ん中あたりにある骨の下のくぼみにあります。
押し方は人差し指、中指、薬指を揃えて指の腹でツボの周辺を頬に優しく3~5回押し込みます。
目元の小じわ対策のツボ
目のたるみやシワに対応したツボを紹介します。
瞳子髎(どうしりょう)
瞳子髎(どうしりょう)の位置
目尻から指1/2本くらい外側にある骨のくぼんだところが瞳子髎のツボです。
目元の乾燥や、乾燥に よる目元のしわ予防には、瞳子髎のツボ押しがおすすめです。両手の中指で左右のツボをそれぞれ押します。
角孫(かくそん)
角孫(かくそん)の位置
側頭部の耳の上先端があたる場所にあります。
押し方は、人差し指、中指、薬指を揃えて指の腹でツボの周辺を回しながら頭皮の上に押し上げるように押していきます。目の周辺や頬が引っ張られるぐらいの強さが良いです。
ツボ押しでエイジングケアを
誰でもツボを刺激するだけで手軽にエイジングケアができるのが、ツボ押しの魅力です。
悩みに対して対応したツボを覚えておけば、いつでもどこでも、気づいた時にツボを押す事ができます。
ツボ押しで、30代後半からも若々しい美肌や美髪、美ボディを目指しましょう。
参考文献
小顔になる!顔ツボ1分マッサージ(三笠書房)
よくわかる美容鍼灸(三和書籍)