睡眠は最高の美容液!プロが教える「睡眠とアンチエイジングの関係」

よい睡眠をとると美容にもよいのか?理想の睡眠時間や睡眠のコツは?睡眠によい食事はある?睡眠の専門家がこのような睡眠に関する悩みにお答えします。

この記事では、睡眠とアンチエイジングの関係を解説し、質の良い睡眠のコツ、睡眠に関するQ&A、睡眠を改善した事で体調が変わった人の事例などを紹介します。

著者情報

矢間 あや

一般社団法人睡眠body協会代表理事

妊娠をきっかけに動く楽しさや大切さを知り海外のYogaに傾倒。正しい体の動かし方やタントラ哲学を学ぶ。Yogaの知識を医療で役立てたいと理学療法士資格(国家資格)を取得。医療現場では、現在の医療体制の限界を痛感する。防げるはずの病気で社会復帰出来ない人を作らない、健康の大切さを伝えるため独立。現在は、睡眠に関する著書を3冊出版し、講演や企業研修などを行う。

【著書】

『カラダをゆるめて最高の睡眠を手に入れる』(エクスナレッジ)

『ぐっすり眠れる体に生まれ変わる ゴロ寝リセット! 』(飛鳥新社)

『まんがでわかる ぐっすり眠れる体の整え方』(イーストプレス)

目次

睡眠は最高の美容液!睡眠とアンチエイジングの関係

睡眠にはいわゆる「若返りホルモン」の一種である、成長ホルモン、メラトニン、セロトニンという3つのホルモンの分泌が関連しています。よい睡眠を取る事で、これらのホルモンが分泌され、アンチエイジング効果を得る事ができます。

それぞれのホルモンと睡眠の関係を見ていきましょう。

若返りホルモン:成長ホルモン

成長ホルモンと言うと子供の背の伸びるホルモンというイメージがあるかもしれませんが、大人になっても分泌されるホルモンです。

成長ホルモンは眠り開始の一番初めにおとずれる深い睡眠時に一番多く分泌されます。

成長ホルモンにはダメージを受けた細胞の修復・再生・肌の細胞の生まれ変わる周期の正常化を促す作用などがあります。成長ホルモンが正常に働けば、肌のターンオーバーが整い美肌に繋がります。

若返りホルモン:メラトニン

メラトニンは、別名「睡眠ホルモン」と呼ばれ、夕方から夜に分泌される眠りを促すホルモンです。朝起きて光が目(網膜)に入ってから14〜16時間後に脳から分泌され、心身をリラックスモードにすることで、自然な眠りを促す働きをしています。

メラトニンには強い抗酸化作用があります。 

抗酸化作用とは、体の酸化を抑える作用のことです。体は常に酸素を必要としていますが、この酸素の一部が体内でサビを発生させます。また、この酸素の働きを阻止する物質(抗酸化物質)も体内で作られています。抗酸化物質が体内で大量発生すると、サビを発生させた酸素からのダメージを受けやすくなり、老化を進めてしまうのです。

メラトニンには、多くの抗酸化物質が含まれており、メラトニンの分泌がよい睡眠とアンチエイジングに繋がるのです。

若返りホルモン:セロトニン

セロトニンは、別名「幸せホルモン」とも呼ばれ、精神の安定や安心感などのメンタルに大きく関与するほか、スッキリ目覚める、自律神経を整えるなどの働きのある脳内伝達物質です。

セロトニンはいくつかの酵素の働きにより、メラトニンに作り替えられるとされています。セロトニンは日中多く分泌され、夜は殆ど分泌されません。逆にメラトニンは夜に多く分泌され、日中は殆ど分泌されません。つまり、セロトニンとメラトニンは表裏一体、コインの表と裏のような存在なのです。

日中にセロトニンがしっかり分泌され、夜はメラトニンが十分に分泌されるような生活を心がけることで、良い睡眠を取れ、成長ホルモンが分泌され、最高のアンチエイジングになるのです。

睡眠の質を上げる3つのポイント

睡眠の質をあげるために最初に行いたいのが、朝日をあびる、軽い運動をする、夜湯船につかるの3つです。

朝日をあびる

良い眠りは、実は、朝起きた時から始まっています。朝日を浴びるメリットは主に2つあります。 

朝日を浴びて体内時計をリセットする

私たちの体には朝起きて活動し、夜自然に眠るというリズムを刻む体内時計があります。体内時計には秒単位のものから年単位のものまで様々な種類がありますが、生活習慣や健康との関わりが深いのは約24時間周期の「概日リズム(サーカディアンリズム)」です。

人間の体内時計の周期は24時間よりやや長い時間であることが分かっています。このズレをリセットするために欠かせないのが朝日です。

朝起きて太陽の光を浴びると、目(網膜)から入った光の情報が脳の体内時計を切り替える部位に到達し、リセットされます。

朝日を浴びてセロトニンを分泌させる

目(網膜)から入った光の情報は、セロトニンの分泌にも影響します。セロトニンは太陽の光で活性化する性質があります。

晴れの日だけでなく、曇りや雨の日でも、室内ではなく外の光を浴びることが大切です。

セラトニンの分泌に必要とされる明るさは1,500〜2,500ルクスと言われています。太陽の光は50,000〜100,000ルクス、曇りでも10,000ルクスほどの明るさがあります。一方、部屋の明るさは、500〜1,000ルクス程度です。いくら部屋の中が明るいと思っても、太陽と室内では光の量が違うのです。

朝起きたら、20〜30分程度は朝日を浴びることが、夜の良い眠りにつながり、メンタルにもアンチエイジングにも効果を発揮するのです。

軽い運動をする

セロトニンは太陽の光を浴びるだけでなく、リズム運動でも分泌されます。リズム運動とは、一定のリズムを繰り返す運動で、歩行や咀嚼などがそれにあたります。

運動習慣がある人は運動習慣がない人に比べて、不眠が少ないことも分かっています。運動というと、ジムできついトレーニングを想像されるかもしれませんが、日常生活の中で習慣化し、続けることが大切です。早歩きやラジオ体操、ウォーキングの他に、階段を使う、ちょっとそこまで歩くなど日常生活の中で動く回数を増やしましょう。

朝日を浴びながら軽いウォーキングや散歩を30分程度したり、ラジオ体操は全身運動になるのでおすすめです。

ただし、眠る前に息が上がるほどの激しい運動を行うのは、交感神経が優位となり体も興奮状態になってしまうため睡眠の妨げになります。激しい運動は太陽の出ている間に積極的に行いましょう。 

夜は湯船につかる

私たちの体温には皮膚表面の表面温度と内臓に近い部分の深部体温という2種類の体温が存在します。眠気は深部体温が下降した時に起こります。

人の1日の深部体温の変化は、目覚めと共に体温が上昇し、夜眠る頃に下降して自然な眠気が訪れます。より良い睡眠のために体温を下げる必要があるため、「お風呂」で体温を上げるとよいでしょう。

睡眠によいお風呂の入り方

・入浴は寝る2〜3時間前

寝る2〜3時間前にぬるめのお湯にゆっくりつかり深部体温を上昇させ、湯上がり後2〜3時間後、深部体温が下降した時に自然な眠気を感じるようになります。

・ぬるめのお湯(38~40℃くらい)

深部体温が上昇するためには、ややぬるめのお湯にじっくりと入浴することが大切です。熱々のお風呂では表面温度しかあがらず、深部体温まで上昇する前にお風呂を出ることになるからです。

朝から日中にかけては活動的に動くことで美容にも効果の高い若返りホルモンの分泌にもつながり、夜はリラックスすることで自然な睡眠を得ることができます。このメリハリが睡眠にも美容にも大切なのです。 

睡眠のプロが答える!睡眠に関するQ&A

ここからは私がよく聞かれる睡眠に関する質問に回答していきます。

睡眠時間は何時間が正解?

睡眠時間に絶対的な基準や正解はありません。睡眠は体質や性別、年齢、職業など個人的な要因に大きく影響されるからです。

そのため、睡眠時間の正解は、「人それぞれ」ですが、以下は睡眠時間の目安です。

睡眠時間は10歳ごろまでは8時間以上、25歳で約7時間、45歳で約6.5時間、65歳ごろになると約6時間というように、睡眠時間は年齢を重ねるにつれて減少していきます。個人差はあるものの、必要な睡眠時間は6時間以上8時間未満あたりだと考えるのが妥当です。

長時間眠る方がよいのか?

睡眠不足は、生活習慣病やうつ病などさまざまな病気のリスクを高めることが研究結果でも分かっています。とは言え、単純に長時間眠れば良いかというとそういう訳でもありません。実は、長時間の睡眠も健康を害するおそれがあると研究で分かっています。

長時間の定義も人それぞれですが、長時間眠った後に、体や頭に違和感がある場合は、寝過ぎの可能性があります。

良い眠りの基準は?

良い眠りの基準は、朝すっきり目覚められることです。すっきり目覚められた朝は気分も爽快になります。そして、日中にしっかり覚醒して笑顔で元気に過ごせていることが何より大切です。
  

季節や年齢によっても睡眠は変化します。まずは自分の睡眠時間が十分かチェックしてみてください。

プロが教える!睡眠によい習慣と栄養素を紹介

睡眠に効果的な習慣を紹介します。自宅にあるモノで簡単にできるので、是非試してみてください。

超簡単!ブランケットの上にごろ寝するだけ

デスクワークや脚を組んで座ったりで、姿勢がねじれている人も多いと思います。姿勢が悪くなると、肌にも睡眠にも悪影響となります。

姿勢が悪くなると、代謝が悪くなり、肌の細胞の生まれ変わる周期も乱れ、肌が乾燥しやすくなります。また、血の巡りが悪くなり、くすみやクマやむくみの原因になります。さらに、姿勢の悪さは全身の筋肉が無意識に緊張状態になるため、睡眠の質を下げてしまいます。

そこで私がオススメするのは、自宅にある毛布やブランケットをクルクル巻いてその上にお尻から頭まで乗せてゴロリと寝るだけの「ごろ寝リセット®」という方法です。

この方法は実際に病院のリハビリで、慢性の肩こりや腰痛などの患者にも利用されており、私の書籍でも紹介しています。姿勢が良くなるほか、痛みや違和感がなく、動きが軽やかになり、筋肉の緊張がほぐれ深い眠りも得られます。 

睡眠の質を上げるためには、栄養も大切

睡眠には、実は栄養素も重要な要因。以下のような栄養素を積極的に摂りましょう。

セロトニンの原料であるトリプトファン

日中にセロトニンが分泌されることがよい睡眠に繋がります。そのためには、セロトニンの原料となる、必須アミノ酸であるトリプトファンを摂る必要があります。必須アミノ酸はタンパク質を作るための栄養素の一種で、体の中で自分では作りだせず、栄養分として摂取しなければいけません。

トリプトファンは納豆・大豆などの大豆製品、チーズ・牛乳などの乳製品に多く含まれています。その他には、ごまや卵、バナナなどにも多く含まれています。

また、肉や魚、米にも含まれるので、主食・主菜・副菜・汁物・果物などをバランスよく摂ることが大切です。

心部体温の低下にも関係するグリシン

グリシンもアミノ酸の一種で、身体の末端部分の血流量を増やして深部体温を下げる働きがあります。深部体温の低下は自然な眠りのためには大切なことです。またコラーゲンを構成するアミノ酸でもあり、美肌のためには必須な栄養素です。

グリシンは肉や魚、魚介類に多く含まれています。最近はグリシンのサプリメントもたくさん販売されていますが、出来れば天然の食物から栄養を摂るのが一番良いでしょう。

さまざまなサプリメントなどが発売されていますが、まずは日頃の食生活を見直すことが、質の良い睡眠にも美容にも大切です。

睡眠を改善して悩み解決した人の事例を紹介

睡眠や身体の不調で悩んでいた方の事例を紹介します。

40代女性 ダイエットの悩み

40代でダイエットにお悩みの女性がいました。彼女は仕事が忙しく運動不足でほぼ動かない生活をしていました。寝不足がストレスや食べ過ぎの原因にもなるため、1日のスケジュールを聞きながら、できるだけ睡眠時間を確保するように指導しました。ダイエットのためだと大変な運動をしなければならないイメージがありますが、まずは軽い運動をして、睡眠の質を上げるようにしました。

30分のウォーキングを日課にし、睡眠時間の確保を心がけた所、2ヶ月で体重がマイナス2kg減りました。

体重が減ったことで心も前向きになり、さらなるダイエットを決意していました。

30代女性 疲労回復で仕事の質がUP!

バリバリと仕事に打ち込んでいた30代女性は、日々仕事の疲れを感じていました。平日は起きた時にスッキリ目覚める感覚がなく、疲労回復ができていませんでした。週末を使って睡眠を十分にとり、平日もできるだけ1時間早く寝るように心がけると、1週間で疲労感が軽減し、仕事の効率が良くなり、仕事の質もあがったと感じたそうです。実際に満足のいく仕事ができたと嬉しそうに話してくれました。 

今夜の睡眠は朝起きた瞬間の過ごし方から決まる!

睡眠と言うと枕や寝具、夜にフォーカスされがちですが、朝起きた瞬間からの行動が質の良い睡眠につながっています。

コロナを機会に在宅ワークが増え、外出の機会が減少し、睡眠に悩む人が増えているようです。

なんとなく肌の調子が悪くなったときは、高い美容液や器具を購入する前に、ぜひ日頃の行動を見直して質の良い睡眠を心がけてみてください。

最高の美容法は自分の身体の中に隠されているのです。

参考文献

e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/

NATIONAL GEOGRAPHIC「健やかな睡眠のカギを握る「メジャースリープ」とは」
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20140317/388358/?P=2

生体リズムの乱れを調整する3要素(光、食事、メラトニン)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinzo/43/2/43_154/_pdf

厚生労働省健康局 健康づくりのための睡眠指針2014
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf

書籍:『自律神経をリセットする太陽の浴び方 幸せホルモン、セロトニンと日光浴で健康に』(山と渓谷社)有田 秀穂

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