幹細胞治療のリスクと副作用を解説!費用から効果の持続期間まで

お肌の曲がり角は3回あると言われています。1回目は20代後半から30代前半、2回目は30代後半、3回目は40代後半です。2回目の曲がり角を迎えようとする30代中頃の肌は、シミやシワ、くすみが目立ちやすくなり、たるみも出てきて非常に不安定な状態になります。

「30代前半と後半の分かれ目では、こんなに違うの?」と思わずため息が出てしまう方も多いのではないでしょうか。このような方に注目されているのが、「幹細胞治療」です。

幹細胞治療は、肌の衰えを感じ始めた方の強い味方となる可能性があります。今回は、幹細胞治療の効果や副作用、費用やリスクなどについて詳しく見ていきましょう。

著者情報

岡本妃香里

薬剤師/医療ライター

大手ドラッグストアで薬剤師として勤務経験を経て、現在は医療ライターとして活動している。

薬剤師だけでなく、化粧品検定1級、薬事法管理者、コスメ薬事法管理者などの資格も取得し、美容と医療の情報提供を得意とする。

目次

幹細胞治療とは?

幹細胞治療とは、自身の幹細胞を培養し増殖させて体内に戻す治療のことです。普通の細胞であれば、目の細胞は目に、皮膚の細胞は皮膚にしか分化できません。しかし幹細胞は、あらゆる細胞に分化することができるのです。

目や皮膚はもちろん、骨や血液などさまざまな細胞に自身を変化させられます。「どのような細胞にもなれる」という幹細胞にしかない特徴があるため、再生医療や美容医療で大きな注目を集めているのです。

幹細胞治療を行うことで、投与された幹細胞がダメージを受けた細胞の修復を促す他、炎症を抑えたり組織を再生させたりする効果が期待できます。

クリニックで受けられる幹細胞治療は、実は誰でも気軽に購入できる幹細胞を使った化粧品とは全く別のものです。幹細胞コスメや美容液、培養液などには幹細胞は含まれていません。エステで取り扱っている幹細胞コスメも同様です。

これらのものには、幹細胞を培養して細胞を取り除いた後に残る上澄み液が配合されています。成分を見ると、「ヒト幹細胞培養上澄液」と書かれていることがほとんどでしょう。

クリニックで受けられる幹細胞治療以外のものには、幹細胞は使われていないので注意してください。自身の幹細胞を培養して行う幹細胞治療と、まったく別の人の幹細胞を培養した時にできる上澄み液を使ったものとには効果にも大きな違いがあります。

幹細胞治療の種類

幹細胞治療には、大きくわけて「線維芽細胞移植」と「脂肪注入法」の2種類があります。線維芽細胞移植とは、採取した線維芽細胞を増殖させて、細胞を肌に戻す治療です。

線維芽細胞は肌の弾力を保つために欠かせないコラーゲンやヒアルロン酸、エラスチンを作る役割を持っているため、治療を行うことで肌の機能の回復が期待できます。

脂肪注入法とは、採取した脂肪を遠心分離し、不純物を取り除いて培養して局所的に投与する治療です。年齢と共にくぼみが目立ってきた部分に注射することで、肌をふっくらさせ若々しく見せます。

幹細胞治療の種類

幹細胞治療の効果

幹細胞治療の効果

幹細胞治療を行うことで肌のハリがアップしたり、シワやほうれい線が目立たなくなるのは、幹細胞が持つ再生能力がしっかり働いてくれるためです。

私たち人間を含め、すべての生き物は毎日少しずつ老化していきます。幹細胞治療は老化を完全にストップさせるものではありませんが、少しだけ時間を戻したり老化のスピードを遅らせることが可能です。

幹細胞治療と同じように、シワやほうれい線を目立たなくする治療は他にもいくつかあり、ボトックス注射やヒアルロン酸注射などが有名です。

ボトックス注射やヒアルロン酸注射は、幹細胞治療と比べると非常に安価です。しかし、効果は一時的なものに過ぎません。ボトックス注射は3~4ヶ月、ヒアルロン酸注射は半年~1年程で徐々に効果がなくなっていくことが一般的です。即効性はありますが、効果の持続性はありません。

一方で幹細胞治療は、ボトックス注射やヒアルロン酸注射のように、治療が終わってすぐ肌に明確な変化が出るものではありません。しかし、幹細胞が元気で若々しい細胞を少しずつ時間をかけて増やすことで、ゆっくりと肌を若々しくしていきます。個人差があるので一概には言えませんが、効果が一時的ではなく、半永久的に持続することが特徴です。

幹細胞治療の費用と効果の持続期間

幹細胞治療は自由診療です。そのため、保険適用にはならず、全額が自己負担となります。保険適用となるのは、脊髄損傷などの治療に用いる場合のみです。

美容目的で幹細胞治療を受ける場合、費用はクリニックによって異なります。安いところでは数十万円、高いところでは1,000万円以上するところもあるようです。

しかし、1,000万円以上もするところは、そう多くありません。150万円前後のクリニックが多い印象です。幹細胞治療は治療費の他に、事前の血液検査や細胞の抽出、培養費用もかかります。料金に含まれていることもあれば、別途追加となることもあるので注意してください。

また、採取した細胞を保管する保管手数料、保管しておくための月額費用が必要なケースもあります。費用にどこまで含まれているのかをしっかり確認してから施術を受けることが大切です。

幹細胞治療の効果が持続する期間は、半永久的だと言われています。ボトックス注射やヒアルロン酸注射のように時間が経っても体内に吸収されてしまうことがありません。

幹細胞治療を行うと、数ヶ月かけて効果が現れてきます。ゆっくりとですが、少しずつ変化が見えてくるでしょう。

ただし、幹細胞治療の効果が持続していても、私たちの身体は毎日少しずつ老化が進んでいます。老化が進むスピードと幹細胞治療によるエイジングケアのスピードにどれくらいの差があるのかによって、効果の持続期間は変わってくるでしょう。

幹細胞治療のリスクと副作用

幹細胞治療は、自身の細胞を取りだして培養して体に戻す治療のため、副作用はほぼないと言われています。ただし、次のようなリスクはあります。

幹細胞治療のリスクと副作用

出血

幹細胞治療は針を使って行うものです。そのため、微量ではありますが出血のリスクがあります。とはいえ、大量出血することはまずありません。予防接種をする時と同程度のわずかな出血があると考えておくとよいでしょう。

感染

針先についた病原体が体内に侵入して、感染症を起こすリスクがあります。幹細胞治療の患者ではありませんが、あるクリニックで美容施術を受けた方が非結核性抗酸菌感染症を起こした事例が過去にありました。

これは、汚染された注射器を使用していたことが原因です。ただし、感染症対策をきちんと正しく行っていれば、感染症はめったに起こるものではありません。

痛み

幹細胞を採取したり、培養したものを注射する時に痛みが生じることがあります。局所麻酔を使って痛みを和らげることもあるため、大きな痛みはありません。感じるとしても針をチクっと刺される程度のものです。痛みが心配な方は、事前に医師へ相談しておくと安心でしょう。

内出血

針を刺した部分に内出血が生じることがあります。時間の経過と共に目立たなくなってくるので、大きな心配はいりません。

麻酔による副作用

麻酔を注射する時に、体質によっては低血圧になったり吐き気がしたりする方がいます。ほとんどの副作用は、軽微で一過性のものです。心配な方は事前に相談しておきましょう。

この他、デメリットとして幹細胞治療を受けられるクリニックが限られていること、費用が高額になりやすいことが挙げられます。

幹細胞治療は根本的なエイジングケアができる

幹細胞治療とは、自身の幹細胞を採取して培養し、体内に戻すことでエイジングケアをしていく治療のことです。幹細胞はあらゆる細胞に分化できるため、30代半ば頃から悩みの種となりやすいシワやたるみ、ほうれい線などを改善できます。

ボトックス注射やヒアルロン酸注射とは違い、半永久的な効果が期待できることが大きな特徴です。時間が経っても体内に吸収されないため、生涯にわたって効果を発揮し続けてくれます。ただし、完全に老化を食い止めるものではないため、どれくらい効果が続くかは個人差があるので注意しましょう。

幹細胞治療は、自由診療のため保険は使えません。クリニックによって費用は大きく異なり、数十万円で受けられるところから1,000万円を超えるところまであります。幹細胞治療そのものに大きな副作用があることは確認されていません。ただし、出血や感染、痛みなどのリスクはあります。

リスクや副作用も理解した上で、治療を受けるかは検討しましょう。

参考文献

ボトックス注射の効果はいつからいつまでの期間続く?継続させるためのポイント

ヒアルロン酸注射の効果が持続する期間は?

脊髄損傷の治療に用いる再生医療等製品「ステミラックR注」薬価基準収載のお知らせ

幹細胞注射・点滴の費用はどれくらい?他の美容医療との比較も紹介

注射による菌感染

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