30代半ばを過ぎたあたりから、肌の調子や体調の変化が起きやすくなると言われ、より一層、美容と健康を意識する年代です。キレイで健康的な身体を維持するには、今の生活習慣の見直しが大切です。
普段の生活習慣が原因で引き起こされると言われる生活習慣病について、今日からできる予防法を詳しく解説していきます。
著者情報
中田早苗
薬剤師/腸活・ファスティング講師
薬科大学卒業後、約7年間総合病院で病院薬剤師として勤務。その後、相談薬局にて予防医学の観点から薬を使わない健康法について患者指導を行い現在に至る。食事と生活習慣の見直しから得られる健康に興味を持ち、そのひとつとしてファスティングの魅力に感銘を受ける。便秘やアトピー、自律神経の乱れなどの悩みとファスティングに深く結びつきがあることを実感。現在までに100名以上のファスティングサポートを実施。
日本人の6割以上が生活習慣病で死亡
生活習慣病は、食事をはじめ、運動、喫煙、飲酒、ストレスなど、普段の生活習慣が原因で起こる疾患の総称です。代表的な疾患としては、糖尿病、肥満、メタボリックシンドローム、高血圧、骨粗鬆症などがあります。
日本人の3大死因は、1位ガン、2位心疾患、3位老衰、4位脳血管疾患と続き、日本人の約3分の2が生活習慣病で亡くなっているとされています。(参考:厚生労働省「令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概況」)
自分にはまだ先の事と思っていても、今の生活習慣が将来の生活習慣病を引き起こす可能性に大きく影響するのでぜひ最後まで読んでください。
年代別の生活習慣病リスク
年代別に見る生活習慣病のリスクを解説します。
20代は体の土台作り。将来の生活習慣病に影響
20代は、体の土台を作る年代で、この頃の生活習慣が将来に大きく影響します。20代では、少々不規則な生活をしても、体力気力が十分にあるので、生活習慣についてあまり気に留める事はない傾向にあります。そのせいか、定期健診も疎かにしがちです。
30代は兆候が出始める
30代では、少しずつ体の異常サインが現れ始めます。例えば、肌トラブルや疲れなどは体からの何らかのSOSサインです。30代は、妊娠、出産を経験し、ホルモン分泌に変化が現れやすく、職場や環境ストレスを抱えやすいため、心身共に変化を感じやすいとされる年代です。
40代は生活習慣病を発症し始める
40代ではさまざまな生活習慣病が起こりやすくなると言われています。肥満の割合は男女共に40代で急増するため、メタボ世代と呼ばれることもあります。
20歳以上の肥満の割合は男性33.0%で、女性は22.3%です。
(厚生労働省 令和元年「国民健康・栄養調査報告」より)
日々のストレスや肥満が引き金となり肥満と共に、糖尿病も増加します。例えば、健康診断などで糖尿病予備軍と診断されてもそのまま放置する人が多くいますが、糖尿病を発症させないためにも、早めに生活習慣の改善を行うことが重要です。
特に、高血圧や肥満、糖尿病などは、初期に症状がほとんど現れないため気づきにくい疾患でもあります。気づかないまま症状が進行してしまうと、早い段階から飲み薬の量が増えたり、合併症を引き起こす危険性も十分考えられます。
自分では健康なつもりでいても、実際には生活習慣病のリスクを抱えている可能性があることを知っておいてください。
定期的に、健康診断や人間ドックを受けて、体を重点的にチェックする機会を持つことも大切です。最近では、乳ガン検診の啓発活動も活発に行われており、以前よりも病気予防と健康への意識が高まりつつあります。
生活習慣病の原因
生活習慣病の具体的な原因について説明します。
食生活の乱れ
食生活の乱れにおいて、摂取カロリー過多の肥満傾向の人、塩分過多の高血圧傾向の人、脂質過多の中性脂肪とコレステロール増加傾向の人に分類して傾向を説明します。
摂取カロリー過多の内臓脂肪型肥満の場合
摂取カロリーが消費カロリーを上回り、暴飲暴食生活が続くと、肥満が進行します。特に、内臓周りに脂肪が溜まる内臓脂肪型肥満の人は、動脈硬化を引き起こしやすいと言われています。
内臓脂肪型肥満の人が、脳梗塞や心筋梗塞を発症する危険度を見た調査では、内臓脂肪型肥満でない人に比べて脳梗塞の危険度は1.6倍、あるいは心筋梗塞や狭心症などの病気になる危険度は2.0倍にもなるという結果が出ています。
塩分過多の高血圧傾向の場合
塩分の摂り過ぎは血圧に大きく影響します。塩分が増えると、体は塩分濃度を一定に保つために水分を溜め込もうとします。その結果、血圧が上昇し、高血圧症を引き起こします。また、塩分の摂り過ぎは、胃ガンのリスク要因の一つであることも分かっています。
国立がん研究センターの追跡調査(2004年)では、食塩摂取量の多い男性で胃ガンのリスクが高く、また塩分濃度の高い食品をよく食べるグループで男女とも胃ガンリスクが高いという結果が報告されています。
脂質過多の中性脂肪とコレステロール増加傾向の場合
近年の、食の欧米化で現代人は脂質を摂り過ぎる傾向にあります。脂質の摂り過ぎは、中性脂肪や悪玉コレステロールを増加させ、善玉コレステロールを減少させます。それにより、肥満はもちろん、脂質異常症や高コレステロール血症を引き起こしてしまいます。
喫煙
タバコの煙には、約200種類以上の有害物質が含まれており、そのうち約60種類に発ガン性があるとされています。
タバコは全身性のガンのリスクを高めるほか、脳梗塞や心筋梗塞の危険因子とされています。また、受動喫煙として、タバコを吸わない人も健康被害を被るため、禁煙することで、自分自身はもちろん周囲の病気のリスクも減らすことができます。
飲酒
「酒は百薬の長」という言葉があるように、適度な飲酒は健康に良いと言われますが、過度の飲酒はさまざまな生活習慣病のリスク因子になります。代表的なものは、肝障害です。
アルコールは主に肝臓で代謝されるため、過度な飲酒は肝臓へ負担がかかります。肝障害が重症化すると肝硬変や肝臓ガンへ進行することもあります。
また、甘いお酒は糖質やカロリーも高く、お酒の種類によっては、中性脂肪を増やしやすくなるので、お酒の種類にも注意が必要です。
運動不足
運動不足は、肥満やメタボリックシンドロームのリスクが上昇します。また、運動不足による長年の肥満は、足腰にも大きな負担がかかるため、骨粗鬆症や変形性膝関節症など、骨や関節などの運動器官に支障をきたします。
これらが原因で生活習慣病のリスクが高くなるため、生活習慣を見直す必要があります。
生活習慣病リスクのチェック
生活習慣病の兆候は自分では気づきづらく、いつの間にか病気に発展しているという事があります。以下に生活習慣病になりやすい人の傾向をまとめていますので、チェックリストの中で当てはまる項目にチェックを入れてみてください。
- 暴飲暴食をする
- 遅い時間に次食事をすることが多い
- 外食の頻度が高い
- タバコを吸う
- お酒をよく飲む
- イライラすることが多い
- 職場や人間関係にストレスを感じることが多い
- 運動不足を感じる
- 運動が嫌い
いくつ当てはまりましたか?
一つでも該当する項目があれば、生活習慣病のリスクを抱えています。
生活習慣病は予防が大切!予防策を紹介
生活習慣病を予防するための具体的な方法について説明します。
食生活の見直し
揚げ物や脂身の多い肉などの脂質の多い食事は避けましょう。お肉などの動物性脂肪は、血液をドロドロにし、動脈硬化を引き起こしやすくします。同じ脂質でも、オリーブオイルやココナッツオイルなどの植物性脂肪を摂取すると良いでしょう。
また、できれば肉類よりも魚を摂ることをおすすめします。魚に含まれる脂はコレステロール値を下げる働きがあります。
ジャンクフードや外食は、塩分が多く含まれているため、高頻度で利用する人は、塩分の過剰摂取傾向にあります。塩分は、1日当たり男性7.5g未満、女性6.5g未満とされています。
塩分の摂り過ぎは高血圧や動脈硬化の原因にもなります。そして、浮腫みやすくなってしまうので、美容のためにも健康のためにも塩分控えめを意識することが大切です。
一方で、野菜は積極的に摂りましょう。野菜に含まれる食物繊維には、コレステロール値を低下させる働きがあります。また腸内環境の改善にも繋がります。さらに、ビタミンとミネラルを十分摂る事で、代謝を活性化するのに必要な栄養素を補うことができ、美容にも効果的です。
体を動かす習慣
適度な運動を行う習慣をつけましょう。単に肥満を予防する目的だけではなく、気分転換やストレス発散にも効果的です。運動が苦手な人でも、無理のない程度に毎日継続することが大切です。
具体的には、毎日30分程度のウォーキングや軽めのジョギングなどの有酸素運動がおすすめです。有酸素運動の方が、体脂肪の燃焼につながりやすいことはもちろんですが、気軽に始めやすいという点がおすすめです。
毎日決まった時間に運動時間を確保できない場合、通勤時に1駅分歩いたり、階段を積極的に使うなど工夫して取り組むのも良いでしょう。
禁煙を試みる
タバコは肺ガンを引き起こすイメージがありますが、それだけでなく心筋梗塞や脳卒中のリスクも上昇させます。年々、喫煙率は減少していますが、ストレス発散のために吸っている人も多いのではないでしょうか。今、タバコを吸っている人も、禁煙することによってガンのリスクを下げることができます。
また、タバコをやめたくてもやめられない人は、禁煙外来などのサポートを受ける方法もあります。
その他の生活習慣
ストレスは、生活習慣を乱す要因にもなります。自分に合うストレス発散方法でストレスを溜め込まないようにすることが大切です。運動で発散させたり、趣味を楽しむなどでストレスコントロールをしましょう。
また、しっかりと睡眠時間を確保することも重要です。体を休めることで、自律神経が整いストレスの緩和、日々の疲れを回復させることが期待できます。夜更かしは控えて、毎日決まった時間に就寝するようにしましょう。
生活習慣病を予防して、健康で美しい身体を手に入れよう!
生活習慣病を予防することは、美容効果も期待できます。食生活が整えば、腸内環境が整い、便秘や冷え、肌トラブルを解消できます。
生活習慣病を防ぐためには、まずは生活習慣の見直しが何よりも大切です。その次に、積極的に運動、ストレスを溜めない生活を送ることが、生活習慣病の予防につながります。簡単なようですが、毎日の積み重ねが必要なので日頃から意識して取り組むことが重要です。
「何だか疲れやすい」「ニキビが増えた」「夜にぐっすり眠れない」など、これらは全て、生活習慣の乱れが原因です。日々の生活が積み重なり、数年後に病気になる可能性があります。このような身体からのSOSサインを見逃さず、今から予防する生活を心がけてください。
参考文献
NHK 「動脈硬化は治る!予防・治療法、薬と食事による改善」
国立がん研究センター「塩分・塩蔵食品と、がん・循環器疾患の関連について」