冷え性を食事で改善!あなたの冷えは何タイプ?体質別対策を紹介

「冷えは万病のもと」と言われるように、冷えという症状は女性にとって、最も身近な体の不調とも言えます。そもそも冷え性とは、一般的には血行障害により体を温める血液が末端まで行き届かずに手足が冷えることです。

しかし冷えに悩む女性が多い一方で、現代医学では明らかに原因のない冷えは「冷え性」と単なる体質として捉えられ、病気として診療の対象となることはありません。他方で中医学(中国伝統医学)では「冷え症」と言い、冷えの症状のことを指し、治療対象になります。またその治療方法もさまざまです。

冷えの症状を軽んじると他の病気につながる原因を作ってしまうことにもなります。

例えば、生理痛の原因の一つに冷えがあると言われます。体が冷えることにより、血行が悪くなり痛みが起きやすくなります。生理痛が長く続くようになれば、さらなる婦人科系の疾患に結びついてしまうかもしれません。

まさに冷えは万病のもと、なのです。この記事では中医学の視点から、冷えのタイプ別の原因と対策を解説します。

著者情報

福本 敦子

薬剤師/国際中医師/女子栄養大学認定食生活指導士

自身の産後の体調不良をキッカケに、中医学の知識を習得する。

西洋医学だけでは未病の改善に限界を感じ、薬剤師としての西洋医学の知識と中医学の知識を基に、体質改善とお悩み解決のサポートをしている。

現在は、各種メディアでの執筆、SNSや講座で情報提供している。

目次

食事で冷え性は改善できる!

中医学には、毎日口にする食べ物が健康を作るという、「薬食同源」の考え方があります。

薬膳はこの考え方をもとに、体質、体調、季節などに合わせた食事を組み合わせて、乱れた体のバランスを整え、健康を保つよう考えられた健康法です。

冷え性は食事で対策できる

食材の組み合わせで冷えを改善

薬膳には、食材を性質ごとに分類する考え方があり、身体を温める食材と冷やす食材があります。

鶏肉や鮭は気という体のエネルギー(以下は気とする)や血を補って体を温めます。疲れやすい方や貧血の傾向のある方に適した食材です。

生姜やニンニクは薬味に使われる食材ですが、寒さの厳しい冬の季節に風邪予防として使うこともできます。体が温まり免疫力を高めることができます。 

たまねぎやかぼちゃ、ネギなどは血液の巡りを改善して、体を温めると言われています。これら温性の食材を体質を考慮しながら毎日の食事に取り入れることによって、冷えに傾いた体質を偏りのないバランスの取れた体質に戻すことができます。

食べ方で冷えを改善

食材だけでなく食べ方にも気を配ると一層の効果が期待できます。まず水分を口にする時は温めたものにしてみましょう。夏季であれば常温でもかまいませんが、冬の水は常温といえどもかなりの冷たさです。特に寒い季節には温めた水分の摂取を心がけましょう。

次に調理方法ですが「お鍋」や「スープ」などの煮込み料理は、お腹に一定時間、温い食べ物が留まることで、体を保温することができます。冬の寒い時期には煮込み料理を積極的に食べていただきたいです。このように体質や季節に合った食材、調理方法で冷え性の改善も可能なのです。

冷え性の原因は?タイプ別の原因を紹介

中医学では冷えは気や血(血液)、内臓の不調など様々な原因によって起こると考えます。

冷えを引き起こしている原因はどこにあるのかを明らかにして、根本的に改善しなければ解消につながりません。

冷えの原因は主に次の6つがあります。それぞれの原因と冷えの特徴を紹介します。

冷え性の諸症状

気の不足による冷え

気不足の方は、もともと体質的に冷えに偏りやすい傾向にあります。病気などで気(エネルギー)を消耗したことなどが原因で、体を温める栄養を含んだ血液を体の隅々まで運ぶ力が足りないため、手足が冷えやすくなります。また環境の変化を受けやすく、寒さを感じやすいです。

血液の不足による冷え

貧血の傾向のある方や、慢性的な病気などで血液を消耗している方が多いです。手足の末端まで体を温める栄養を含んだ血液が行き届かなくなるので冷えが生じやすくなります。

また、産後の女性は出産時の出血に加え、昼夜関係なく赤ちゃんの世話をすることで気血を消耗していますので注意が必要です。

ストレスによる冷え

ストレスによって気の流れが滞っている方は血液の流れも同じように滞ってしまうので、手足の末端まで血液が運ばれずに冷えが生じます。緊張を強いられる場面が多い方に起きやすい冷えのタイプです。

むくみによる冷え

食生活のバランスが崩れ、体内に余分な水分が溜まり、むくみとなり冷えを生じることがあります。

冷たいものを飲食したり、甘いものを食べ過ぎることによって身体がむくんでいる方に多いタイプです。

血流の不足による冷え

食生活の乱れにより血液に粘りが生じ(血液がドロドロ)、血流が悪くなり、冷えが起こりやすくなります。

足元は冷えているのに頭部はのぼせている傾向が見られることがあります。

加齢による冷え

年齢と共に冷えが強くなる場合は、腎(じん)という生命力の源の気が減少したために起こる冷えで、特に高齢者の方に多い傾向があります。

以上、冷えの原因別にタイプを分類しました。原因が一つの場合もありますが、人によっては複数の原因を抱え、複数タイプに当てはまる可能性があります。

タイプ別冷え性対策~食事方法~

ここまでで、冷えにもいろいろなタイプがあるということがお分かりいただけたと思います。ここからはタイプ別の冷え性対策と薬膳の視点から見たおすすめの食材と取り入れ方のコツを解説します。

冷え性の人が気をつけるべきポイント

気の不足タイプ

体を温める気が不足している人は手足の冷えの他にも、疲れやすい、胃腸が弱いなどの悩みを抱える方が多いです。

胃腸に負担のかかる脂っこい食事、味の濃い食事、甘い食べ物、冷たいものなどの食べ過ぎに注意しましょう。

また、体の土台を作るタンパク質をしっかり食べることも大切です。鶏肉、脂身の少ない赤身肉、白身魚、豆腐などを摂りましょう。また調理方法も、茹でる、煮るなどのあっさりとした方法で取り入れてみてください。

薬膳では気を補う食材として、米、豆類、イモ類、キャベツ、ニンジンなどがあります。

血液不足タイプ

血液不足タイプの人は手足の冷えの他に、顔色が白っぽい、生理不順がある、めまいを起こしやすいなどの悩みを持つ方も多いです。

気の不足タイプの方と同様に胃腸の負担になる食事を控え、タンパク質をしっかりと食事に摂り入れましょう。タンパク質は血液を作るために欠かせない栄養素です。

薬膳では血を補う食材として、レバー、人参、黒ゴマ、黒豆、黒きくらげ、ほうれん草などがあります。

取り入れ方のコツとして、例えば、レバーをまとめて煮て作り置きしたものを毎日一かけずつ食べる、黒ゴマをすってごはんにふりかける、黒きくらげを味噌汁に入れるなど、簡単にできる一工夫で血を補いましょう。

ストレスタイプ

ストレスタイプの人は手足の冷えの他に、イライラ、わき腹が痛い、PMS、肩こり、頭痛などの悩みを抱える方が多いです。

辛くて刺激の強い食べ物、コーヒーやエナジードリンク等のカフェイン飲料、熱過ぎる飲食物などは控えめにしましょう。

薬膳ではストレスを解消しやすい食材として、セロリ、三つ葉、シソなどの香りのある野菜やレモン、オレンジなどの柑橘類などがあります。

取り入れ方のコツとして、例えば、白身魚のソテーにレモン汁を絞ればストレス対策をしながら塩分を控えた食事にすることもできます。

むくみタイプ

むくみタイプの人は手足の冷えの他に、お腹の冷えや手足のむくみ、体が重だるいなどの悩みを持つ方が多いです。

冷たい飲食物を控え、甘い物の食べ過ぎにも注意しましょう。薬膳ではむくみを解消する食材として、ハトムギ、小豆、とうもろこし等の豆類や、発汗を促す生姜、ネギ、シソがおすすめです。

ハトムギはどうやって食べたらいいのか分からないと思われるかもしれません。ハトムギの簡単な取り入れ方のコツは、まとめて茹でて冷凍しておけば、必要な分だけいつでも取り出すことができます。また、ハトムギをごはんと一緒に炊いてもおいしいですし、サラダに加えると葉っぱのシャキシャキとハトムギのモチモチで楽しい食感が味わえます。

血流不足タイプ

血流不足タイプの人は冷えのぼせの症状の他にも、生理不順、肩こり、シミなどの悩みを持つ人が多く、更年期の女性に多く見られます。

また食生活の乱れから血流が悪くなり、冷えの症状が出ることもあります。暴飲暴食に注意し、温かい食事で血流を良くすることに努めましょう。薬膳では血流を良くする食材として、青魚類、たまねぎ、ニラ、黒きくらげ、青梗菜などがあります。

取り入れ方のコツとしては、たまねぎのみじん切りを酢に漬けておけば、色々な料理の下ごしらえやトッピングに手軽に使えてとても便利です。

加齢タイプ

年齢を重ねるにつれ冷えが気になるようになった方は、手足の冷えの他にも、腰の冷えや痛み、疲労感、トイレが近いなどの悩みを持つ方が多いです。ご高齢の方に限らず思い当たる症状がある方は生活を見直しましょう。

冷たい飲食物を控えましょう。また、足腰を冷やさないように、腹巻やレッグウォーマーで保温しましょう。

タンパク質をしっかり食べ、筋力を落とさないよう適度な運動も大切です。薬膳では足腰の冷えに良い食材として、エビやくるみがあります。また、杜仲茶は体を温めるだけでなく、足腰を丈夫にする効果もあると言われているのでおすすめです。杜仲茶はドラッグストア等で手に入ります。

冷え性が改善した3名の事例を紹介

実は、冷え性を改善するためには何かを飲んだり食べたりするだけではなく、”やめる”ことも大切です。そのような事例も含めて、冷え性が改善した事例をご紹介します。

下半身のむくみで悩む50代女性の事例

【症状】

手足の冷えがあり、ふくらはぎが冷えてむくみでパンパンになっていました。

【対策】

むくみの他にもお悩みがあり、そちらを優先するため冷えとむくみについては食事の摂り方のみをアドバイスしました。

冷たいものが大好きで、氷をいれた甘い飲み物を注文することが多かったため、まずは、冷たい飲み物や生もの等を控えてもらいました。汗をかきにくかったため、発汗作用のある食材を食事に取り入れました。

【結果】

約1ヶ月後、冷えとむくみでパンパンで、足が重くて怠かったのが、かなり軽くなったと喜んでいました。

出産後の冷えで悩む30代後半女性の事例

【症状】

出産後に体力が低下して、体の冷えが酷かった。入浴しても体が温まらないので、30分以上湯船に浸かる必要がありました。

【対策】

昼ご飯を冷凍食品で済ませていましたが、お弁当を手作りすることに変えました。

また、朝の紅茶に生姜とはちみつを足して飲むようにしました。

【結果】

数ヶ月後にはお風呂で寒さに震えることはなくなりました。

手足の冷えが悩みの10代女性の事例

【症状】

手足の冷えがあり、寒がりでした。

【対策】

アイスや冷たい飲み物が好きで頻繁に口にしていたため、それらをなるべく控えてもらいました。

少食で炭水化物中心の食事だったため、肉や魚などのタンパク質を増やしてもらいました。

食事のアドバイスに加え漢方薬を併用しました。

【結果】

1ヶ月後には手足の冷えは残るものの、体は温かくなりました。

冷え性は改善できる!まずは1ヶ月試してみて!

冷え性と言っても、手足の冷え、体の冷え、腰の痛みを伴う冷えなど、単純ではありません。また冷えの原因も様々あることが分かりました。

冷えを改善するには、その原因を突き止めそれぞれに合った養生を続けることが大切です。

日常的に冷たい食べ物や飲み物を口にしている方は、まずはその習慣を見直してみましょう。そして体質に合った食材を取り入れることで、1ヶ月程度すると何らかの小さな変化を感じる方が多いです。

ただし、年齢を重ねることで生じる冷えを改善するのは少し時間がかかります。それでも毎日の生活や食事の習慣を見直し、養生を続けることは決して無駄にはなりません。

良い方向への体調の変化は気づきにくいものです。しかしながら養生を続けていく内に、良い変化も悪い変化と同様に感じることができるようになるでしょう。

いずれのタイプも体質を改善するまでには時間がかかります。コツコツと養生を続けて冷え性を改善していきましょう。

参考文献

薬膳&漢方の食材事典 阪口珠未 著

いかに弁証論治するか 菅沼栄 著

漢方の暮らし365日 川手鮎子 著

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