漢方の美容効果を解説!肌トラブル別おすすめの漢方薬

「急に湿疹が出やすくなった」「大人ニキビができる」「手湿疹がひどい」「赤ら顔が恥ずかしい」このような悩みをお持ちではないですか?

「年齢のせいかしら」とワンランク上の基礎化粧品を選んだり、皮膚科を受診して塗り薬を処方された方も少なくないかもしれません。

期待する結果は得られましたか?  

ここで考えてみてください。20代の頃と比べて変化しているのは、肌だけでなく、体力も気力も若干衰えていると実感することがあると思います。

肌トラブルには塗り薬で対処するのが一般的ですが、体は内側も外側も少しずつ変化します。体の内側の変化のサインが、肌の変化として現れているのだとしたら、漢方薬などで体の内側をサポートすれば、肌も整いやすくなります。

この記事では、老けない肌をキープするための漢方薬の活用方法をお伝えします。

著者情報

下川 麻里

薬剤師

薬剤師として、 24年間で延べ1万人以上の患者に向き合ってきた。女性特有の悩みに対して、薬、漢方、アロマなどに関わる幅広い知識に対応し、女性が気軽に心身の悩み相談ができる薬店を開業。延べ1万人以上の心身の相談経験あり。

目次

漢方が肌トラブルに作用する仕組み

西洋医学の対象となるのは“疾患”であり“症状”です。原因がはっきり分かっているトラブルに対してはシャープに反応してくれます。

一方、漢方の対象は“人”です。心身のバランスが崩れた状態を人の異常と捉え、治療の対象とします。そのため西洋医学が対象としない「なんとなく調子が悪い」といった状態や、具体的なトラブルが起きる前のホルモンバランスや神経系の微妙な乱れも、漢方の治療対象になり得ます。

ここで分かりやすい例をご紹介します。

「急に手湿疹がひどくなった」という方に「最近眠れていない」とか「月経周期が乱れている」などの症状が付随しているとします。

この方の手湿疹の治療に西洋医学の塗り薬を使うのと並行して、適切な漢方薬を服用すると、自律神経やホルモンバランスが整えられ、不眠や月経不順が改善し、同時に湿疹も出にくくなる可能性があります。

その結果、塗り薬は早い時期に中止でき、その後は漢方薬によるサポートで体調を整えることができます。

この例で分かるように、西洋医学と漢方は決して相反するものではありません。むしろお互いに補完し合えるものなのです。

年齢を重ねるごとに刻々と体調が変化するのは、男女共に同じです。その変化は多くの場合「なんとなく」であるため、不調を感じても誰かに相談する機会を逸してしまうことが、特に女性には往々にしてあります。

漢方薬はそんな女性の強い味方になってくれます。

肌荒れ対策に漢方治療がおすすめの人

肌の悩みを「たいしたことない」と軽く扱って、市販の塗り薬を適当に選んだり、内科を受診したついでに専門外の医師に頼んで塗り薬をもらって対処している人は少なくありません。

強い薬で一時的に症状が改善しても、その後さらに酷い症状で苦しむことになるのではないかと、皮膚科受診をためらい、不快な状態を我慢し続けている方もいるかもしれません。

肌荒れが続けば、人に会いたくなくなったり、気持ちがふさぎ込んでしまいます。顔や手など、常に人目にさらされる部分にトラブルがある場合はなおさらです。

肌の状態は心の不調に直結するため、肌荒れを「たいしたことない」と軽く扱うのは危険です。

このように解決策が分からず、肌荒れを我慢している人にこそ、是非漢方を試していただきたいです。

決して強力な塗り薬を重ねていくのではなく、適切な塗り薬と漢方薬を組み合わせることで、予想以上の効果が得られることもあるのです。

漢方の視点から見る肌荒れの原因

冒頭でも述べたように、漢方は疾患の症状ではなく“人”を対象とします。

漢方の視点から見た基本的な肌トラブルの治療方法は、皮膚疾患についても心身のアンバランスが原因であると考え、体の中に働きかけてバランスを整えていきます。

漢方に興味をお持ちの方なら「気」「血」「水」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。漢方ではこの3つの要素が全身を巡って体調をコントロールしていると考えます。

病名ではなく、その人の不調の原因と、体質や体力、心身の状態などを見ながら使う薬を考えます。

例えば、ニキビの表面上の原因はニキビ菌や皮脂の分泌ですが、その人がストレスを抱えて眠れていないとしたら「気」を整える治療が必要です。あるいは生理不順で苦しんでいるとしたら「血」を整えるのが最優先となります。

つまり漢方の視点では、肌トラブルの原因はストレスや生理不順などの形で現れる「気」「血」「水」の乱れなのです。

したがってニキビという一つの症状であっても、漢方では人によって異なる対処方法がとられます。

だからと言って表面の不快な症状を放置するわけではありません。適切な塗り薬で炎症を抑えながら、同時に漢方を使って体内を整えればよいのです。

肌トラブル別、おすすめの漢方薬

肌のトラブルに対応する漢方薬を一覧でご紹介します。

この表はあくまでも目安です。実際に漢方薬を使う際は専門家のアドバイスを受けてください。

出典:フローチャート皮膚科漢方薬(株式会社新興医学出版社)

漢方治療に関するよくある質問

漢方薬を初めて利用する方には、不安な事もあると思いますので、よくある質問にまとめて回答します。

Q:漢方薬は自然なものだから副作用はなく安心ですよね?

A:漢方薬にも副作用はあります。

体質に合わないものを服用すると、思ったような効果が出ないだけでなく、思わぬトラブルが起きることもあります。

また一般薬と違い生薬成分が生成されずに使われているため、トラブルが起きた場合にも原因物質の特定が難しいこともあります。

漢方薬も薬ですので、なるべく専門家の意見を聞きながら選んでください。

また、何か不調を感じた時には、ためらわずに専門家に相談してください。

Q:漢方薬の効果的な飲み方は?

A:漢方薬は食前に、顆粒剤をお湯に溶かしてお茶のようにして飲むのがおすすめです。

「医食同源」という言葉があるように、漢方では薬も食事の一部のように捉えます。

漢方薬では複数の生薬がバランス良く配合されてますが、これを食後に飲むと、食事の影響を受けてバランスが若干崩れます。そのため食事の影響を受けない食前の服用が推奨されます。

しかしバランスが崩れるといっても、ほんのわずかですので、食前に飲み忘れたら食後に服用しても問題ありません。

また一般的な漢方薬の顆粒剤は、元々は生薬を煮出した液体(お茶)です。お湯に溶かしてお茶に近づけて服用した方が、より効果を発揮できると考えられます。

しかし、これも絶対ではありません。お湯に溶かすと匂いが気になる人は、顆粒のまま粉薬のように飲んでください。

漢方の効果的な飲み方

Q:漢方薬には保険が適用されないのでは?

A:20年以上前には漢方薬のほとんどが健康保険の対象外でした。しかし現在では、保険適用の漢方薬エキス顆粒剤は100種類以上あります。一般の医師が処方するのは保険適用のある漢方製剤です。

漢方専門医や漢方薬局は、この限りではありません。受診の際に確認してください。

Q:漢方薬は長く飲み続けないと効果が出ないのでは?

A:漢方薬についてよく言われるのが「効果はすぐには出ない」です。実際にはそんなことはありません。

確かに漢方薬を飲んだ直後に効果を実感することは、ほぼありませんが、10日~2週間程度服用していれば、何かしらの変化があります。

逆に、指示された通りに服用しているにもかかわらず、2週間以上何も変化を感じられなければ、その薬は体質に合っていないのかもしれません。他の治療方法を考えましょう。

Q:漢方薬は複数組み合わせてもいいの?

A:医師や薬剤師が複数選択する場合は、問題ないと思われます。

自分で漢方薬を複数選んで重ねて飲むのは、極力避けていただきたいです。

それぞれの漢方薬には複数の生薬が含まれています。複数の漢方薬を選ぶと、場合によっては生薬が重複して過量になり、思わぬトラブルを引き起こすかもしれません。

医師や薬剤師は専門家として責任をもって選択しますが、自分でドラッグストアやオンラインで購入する場合には、チェックが甘くなりがちです。

基本的には、自己判断で漢方薬を複数同時に服用するのはやめましょう。

漢方で肌トラブルを根本から改善しよう!

人によって、肌の不調の原因も、改善のために求める治療方法も異なります。

肌トラブルが長引いている方は、もしかしたら新しい治療を試みるたびに思ったような結果が出ず、疲れて絶望的になっているかもしれません。

漢方は体と心の両方に働きかけ、様々な症状にきめ細やかに対応できるという特長があります。漢方薬で不調の根源にアプローチして体調を整えると、今までと同じスキンケアでも肌の状態が見違えるように整うかもしれません。また、他の慢性的な症状も楽になり、身体が軽くなるかもしれません。

体調が良くなれば、気持ちが明るくなります。

肌トラブルが改善すれば、顔を上げて外出する気持ちになります。

今までとは少しテイストの違うメイクやファッションにも心が動くようになります。

肌トラブルが長引いている方は、漢方薬で心身共にケアをして、あなたらしい生活を手にしてください。

参考文献

フローチャート皮膚科漢方薬(株式会社新興医学出版社)新見正則 帝京大学医学部 外科 准教授 / チータム倫代 祖師谷みちクリニック院長

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