コロナ禍のダイエット法の一つとして、週末ファスティングやプチ断食が人気です。
ファスティングの本来の目的は、私達の身体が元々持っている機能を最大限引き出し、活性化させることにあると言われています。それに付随して、ダイエットや美容、健康など様々な嬉しい効果が期待できます。
この記事では、ファスティング初心者に向けて、ファスティングのダイエットや美容効果のメカニズム、具体的なやり方と注意点を紹介します。
著者情報
長谷川ろみ
腸活研究家
麹のちから推進委員会代表、腸活メディア「腸内革命」編集長、発酵ライフ推進協会オンライン校校長を務めるなど、腸活の美容健康効果の啓蒙や日本の発酵文化を伝える活動をしている
ファスティングがアンチエイジングに繋がるワケ
ファスティングの本当の意味と効果について整理してみましょう。
ファスティングとは?
ファスティングは、別名「断食」と言います。「断食」という名の通り、一定の期間、食べ物を断つ(=断食)ことを指しています。インドの伝承医学であるアーユルヴェーダの中で行われる断食(ファスティング)は、自然治癒力を活性化させるために行われ、約一週間食べ物を口にしないなど、厳しいルールが設けられています。
ダイエット効果やアンチエイジング効果を期待して行われる近年のファスティングは、そこまで厳しいものではありません。人気のファスティングは、週末だけ食べない「週末ファスティング」や半日だけ食べない「半日ファスティング」など、ごくごく短期間のものです。
このように「ファスティング」が示す意味は年々広がりつつあり、今では手軽な健康維持法の一つになっています。
ファスティングによってデトックスできる
ファスティングは、私たちが毎日している「食べる」という活動を休む事で、胃や腸などの臓器を休めることができます。また、空腹を感じる事で、副交感神経が優位になり、普段の消化活動によって疲れた腸が正常化して、排便しやすくなることが分かっています。
つまり、ファスティングで臓器を休めて、デトックスできるようになるのです。ファスティング中のこのような身体の変化がダイエット効果やアンチエイジング効果に繋がることが期待されています。
ファスティングのダイエット効果
食事から糖(エネルギー源)を得られなくなると、身体は脂肪をエネルギーに変えようとします。そのため、体重や体脂肪が減りやすくなります。
アメリカのベイラー大学で行われた研究(※1)によると、約3~12週間の半日ファスティングによって、体重を約3~7%、体脂肪を約3~5.5㎏、総コレステロール値を約10~21%減らすことができたというデータが発表されています。
体重や体脂肪が減る原因は、半日ファスティングによる複合的な変化によるものですが、アメリカのカリフォルニア大学は、半日ファスティングによって腸内細菌叢に変化が起こり、代謝機能に影響を与えた可能性も示唆しています。(※2)
ファスティングのアンチエイジング効果
アンチエイジング効果については、アメリカのウィスコンシン大学と加齢研究所が1980年代から合同で進めている実験をご紹介します。
ヒトと同じ哺乳類であるアカゲザル約200匹を2つのグループに分け、一方のグループには自由に食事をさせ、もう一方のグループには約3割のカロリー制限を行った食事を食べさせて、約20年健康状態に関する経過観測を行いました。
この研究で、カロリー制限を行った群の方が、健康増進と寿命延長効果があると報告されました。
ヒトを対象にしたアンチエイジング効果については、まだ研究内容が少ないですが、南カリフォルニア大学長寿研究所などの共同研究(※4)によると、断食摸倣食と呼ばれるカロリー制限を行った食事によって、ヒトの体内の炎症を減らす可能性も注目され始めています。
ファスティングの種類
免疫力改善からダイエット効果・アンチエイジング効果まで、多くの変化が期待されているファスティングですが、その種類は期間別に大きく3つに分けることができます。
インドの伝承医学の断食(1週間以上)
インドの伝承医学であるアーユルヴェーダの「断食(ファスティング)」は、約1週間で自然治癒力を活性化させるために行われます。
1週間以上の長期的なファスティングは、素人が行うにはリスクも高く、医師などの専門家の指導がない形で実行するケースはあまり多くありません。
プチ断食 (約2~3日)
1週間以上の長期的なファスティングの代わりに注目され始めたのが、酵素ドリンクなどのファスティングドリンクを利用して行う、プチ断食や週末ファスティングです。
仕事や学校に通う平日は普通の食生活を送ることができるので、週末だけ食事制限を行う週末ファスティングは一時ブームになりました。
しかし、一方でダイエットへのモチベーションが高くない場合に行うにはハードルが高く、全ての人が実践しやすいわけではありません。
半日断食 (1日以内)
プチ断食からさらに簡易化して利用しやすくなったのが、1日の中でカロリー制限を行う半日断食です。
半日断食には多くの種類がありますが、人気に火がついたのは「16時間ファスティング」です。
1日24時間の内、食べものを口に入れない時間を16時間作り、残りの8時間のみ食事を行うという分かりやすい方法です。16時間ファスティングは実行しやすく、メディアにもたくさん取り上げられました。
基本的に8時間内に食事を済ませれば、食べるものや食べる時間には制限はありません。
健康な人が、自分の健康維持のために1日以内で行う半日断食は、これまでの中長期で行うファスティングよりかなりリスクが低く、取り組みやすくなっています。
ファスティングを始めるなら、まずは1日以内で行う半日断食がおすすめです。
ファスティング中の注意点と対処法
半日断食は、比較的リスクが低い健康法の一つです。しかし、万人に合う健康法はありません。自分の体調の変化を見て、以下の点に注意しながら、半日断食を検討してみましょう。
注意点① 低血糖に注意
半日断食では、普段より血糖値のコントロールが難しくなります。
16時間食事をしないことによって、血糖値が下がり過ぎてしまって体調不良に陥ったり、逆に16時間後の食事で血糖値が上がり過ぎてしまったりと、身体が普段と違うことに違和感を覚える可能性があります。
また、血糖値が不安定になることで、逆にファスティングを行う前より脂肪がつきやすくなったり、脂肪を溜め込みやすくなる可能性もゼロではありません。
たとえ16時間ファスティング中であってもバランスの良い食事を心がけ、少しでも違和感があればすぐにファスティングを終了し、いつもよりさらに自分の身体の変化に注意するようにしましょう。
注意点➁ タンパク質不足に注意
半日断食中は、とにかく「食べない」ことに注視してしまいがちです。
たとえ1日の内に8時間しか食事時間がなくても、1日3食から2食や1食に変更したとしても、食事のバランスは変わらずきちんと考慮するようにしましょう。
食べられない時間が増えると、すぐにエネルギー源になる糖質を欲してしまい、タンパク質の摂取量が減る事がよくあります。
厚生労働省が推奨しているPFCバランスに収まるように、栄養バランスを考えて食事メニューを決め、よく噛んで食べるようにしましょう。
厚生労働省推奨のPFCのバランス(※5)
タンパク質(P):約15%
脂質(F):約25%
炭水化物(C):約60%
また食べる時間を制限することで、筋肉量を減らして代謝を落とさないように、十分に運動することも心がけましょう。
ファスティングあるあるQ&A
半日断食中の良くある質問をまとめました。
- 半日断食中におすすめの食べ物はありますか?
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バランスのよい食事をすることが大前提ですが、それに加えてデトックスを促す成分が多く含まれた食材を食べるのがおすすめです。(※6、※7)
中でも今注目されている成分は、「スペルミジン」です。スペルミジンは、ポリアミンに分類される有機化合物のことで、発酵食品に多く含まれることが知られています。
醤油やワインなどにも含まれますが、特に多く含まれていて食べやすいのが納豆です。東京都健康安全研究センターの分析(※8)によると、納豆の中でも特に大豆を細かく刻んだひきわり納豆の検出率が高いことがわかりました。納豆はタンパク質も豊富なので、ファスティング中に不足しがちなタンパク質を補えます。
半日断食では、食事と食事の間の時間が長くなるので、急に糖質をたくさん摂ると血糖値も上がり過ぎる心配があります。久しぶりに食事をする時は、ひきわり納豆を使った薄味の納豆汁などでまずは胃腸を慣らしながら食事をしましょう。
- 半日断食をしたら、だるさがとれません
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たとえ半日だけの断食であったとしても、少しでも身体に違和感があるなら、すぐにファスティングを中断して、医師に相談しましょう。
ファスティングで美と健康を手に入れよう!
今回は、ファスティングの中でも初心者が取り組みやすい半日断食をテーマに、その効果や注意点をまとめてみました。
ファスティングで空腹時間を作ると、腸の機能が正常化し、排便しやすくなるだけでなく、糖質から脂質へエネルギーの作り方が変わり、脂肪を燃焼しやすくなることが知られています。
また、最近注目されているのはアンチエイジング効果です。空腹時間を作ることで見た目の老化スピードが遅くなり、老化の素となる体内炎症の反応が起きにくくなるという研究結果も発表されています。
まだヒトによる研究結果は少ないので注意は必要ですが、自分の身体をよく観察しながら自分に合った方法を探してみてください。
※この内容は、診断・治療または医療アドバイスを提供しているわけではありません。あくまで情報提供のみを目的としています。
※診断や治療に関する医療については、医師または医療専門家に相談してください。この内容は医療専門家からのアドバイスに代わるものでもありません。
参考文献
(※2)Metabolic Effects of Intermittent Fasting
(※5)厚生労働省推奨のPFCのバランス 1―5 エネルギー産生栄養素バランス
(※6)The search for antiaging interventions: from elixirs to fasting regimens
(※7)Dietary spermidine improves cognitive function
(※8)発酵食品に含まれるアミン類