最近では中高年だけでなく、30代の女性でも尿漏れを経験して悩む人が増えてきています。
咳やくしゃみをした時、重たい物を持った時、大笑いした時、ダンスやジャンプした時など、生活のふとした瞬間に尿漏れをする事があります。特に若い女性は恥ずかしくて人には相談しにくいと一人で悩んでいる方も多いようです。
この記事では尿漏れの原因と対策をご紹介します。
著者情報
岩村増美
骨盤底筋・ピラティスインストラクター
ピラティス指導歴15年、骨盤底筋エクササイズを指導する。米国の泌尿婦人科医が考案した骨盤底筋エクササイズである、Pfilatesインストラクターを取得し、女性のお悩みで多い、生理痛、産後ケア、更年期障害、尿もれやデリケートゾーントラブルに特化した講座が好評を得て地元メディアに多数出演。自身も子宮筋腫など婦人科系の悩みを抱え、克服した経験を基に指導をしている。
骨盤底筋、女性ホルモン、生理痛などの女性のバイブル本となる著書「masumi式愛され女性学~あなたを10倍輝かせる膣トレ術~」を出版。 美姿勢ピラティス、体幹ピラティス、骨盤底筋エクササイズ、美尻・美脚エクササイズを得意とする。
女性特有の尿漏れの原因
尿漏れにはいくつか種類があり、病気や認知症、身体機能の低下が原因で起こるものもありますが、女性の尿漏れで一番多いのが、重たい荷物を持ったり、咳やくしゃみをした時に起こる腹圧性尿失禁です。このタイプの尿漏れは、週1回以上経験している女性は500万人以上いると言われています。
原因は出産や加齢による骨盤底筋群という尿道括約筋を含む骨盤底の筋肉の緩みや衰えから起こります。骨盤底筋とは、骨盤の底にある筋肉や靭帯の分厚い層で、膀胱や尿道、子宮、卵巣などの臓器を下から支えています。
骨盤底筋が緩む原因
女性の骨盤底筋が緩む原因には以下があります。
・妊娠、出産
・エストロゲンの減少
・運動不足
・加齢による筋肉低下
・便秘による力み
・冷えによる血流疾患
・肥満による膀胱圧迫
・姿勢の悪さ
上記の要因の中でも、女性の尿漏れに多いのが、「妊娠、出産」と「エストロゲンの減少」です。
妊娠中に骨盤底筋に負担がかかって伸びきってしまい、筋収縮の低下と腹圧との協調性が低下します。さらに、出産でも筋肉や靭帯はダメージを受けますが、順調であれば約1~2ヶ月で回復すると言われています。
エストロゲンが減少する事で膣や膀胱、尿道の血流が減少し新陳代謝も低下します。特に40代からの更年期(閉経前後)はエストロゲンが急激に低下するため、膣や外陰部の粘膜が薄くなり、骨盤筋膜や会陰膜(肛門と膣の間)も薄く弱くなります。
さらに、冷えや便秘などが尿漏れに繋がります。骨盤底筋には毛細血管が集中しており、冷えによる全身の血流が悪くなり、骨盤内の内臓も冷えて筋肉や内臓の働きが低下します。便秘をすると、停滞した便が膀胱と骨盤底筋を圧迫するため尿が漏れやすくなります。
このように、日常生活の様々な事が尿漏れの原因になるため、誰でも尿漏れを経験する可能性があるのです。
尿漏れ予防のための骨盤底筋トレーニング
誰でも簡単に出来る尿漏れ予防のトレーニングと、効果を実感するまでの期間を紹介します。
呼吸で骨盤底筋トレーニング
①椅子に深く腰を掛ける。又は仰向けに寝た状態で両足の膝を立てます。
(足の幅は坐骨幅またはスモールボールやクッションなどを挟むと意識しやすいです)
②鼻から息を吸って口から吐きながらスモールボール又はクッションを軽くブッシュします。(内転筋や腹筋、骨盤底筋に働きかけやすくなります)
③もう一度鼻から息を吸って吐きながら肛門を優しく中心に引き寄せます。
④もう一度鼻から息を吸って吐きながら膣口を優しく中心に引き寄せます。
⑤もう一度鼻から息を吸って吐きながら優しく尿道口を中心に引き寄せます。
※優しく中心に引き寄せて引き上げるイメージです。
⑥慣れてきたら、息を吐きながら、肛門に小豆の豆を入れて引き寄せるイメージでその状態をキープします。膣口にも小豆の豆を入れるイメージでキープします。尿道口にも小豆の豆を入れるイメージでキープします。息を吐きながら小豆の豆を下に落とすイメージで肛門、膣口、尿道口を緩めます。
このトレーニングの効果
骨盤底筋群の肛門、膣口、尿道口を呼吸と合わせて収縮弛緩させることで、血流の流れが良くなり、筋肉の働きと内臓の機能が良くなります。
スモールボールやクッションを挟むことで、骨盤底筋を意識しにくくても、腹筋、内転筋、殿筋といった骨盤底筋の協働筋を動かすことで、骨盤底筋に働きかけることが可能です。
トレーニングをするタイミング
テレビを見ながら、または料理中や仕事の合間にも誰にも気付かれずに、いつでもどこでもトレーニングが出来ます。
効果を感じるまでの目安
どのような目的のエクササイズやトレーニングでも、直ぐに効果があるものではありません。また効果を保証するものでもありません。個人差はありますが、最低3ヶ月は続けてみて下さい。症状が重い場合は、ホームドクターに相談してみることをおすすめします。
尿漏れ対策グッズを紹介
自分でトレーニングをする時間がない方や、体を動かす以外で尿漏れ対策したい方におすすめのグッズを紹介します。
フェムテック商品
近年、話題を集める「フェムテック」をご存知ですか?
フェムテックとは、Female(女性)とTechnology(技術)を組み合わせた造語です。
女性の身体の様々な悩みを解決するための製品やサービスを指します。例えば、月経、妊娠、不妊、産前、産後、更年期、骨盤底筋、デリケートゾーン、セクシャルウェルネス、メンタルヘルスなどの女性特有の健康問題の解決を目指します。フェムテック商品には、骨盤底筋トレーニングデバイスなど、尿漏れ対策商品も発売されています。
elvie エルビー
イギリス発のスマホアプリと連動して膣圧を測り、トレーニングをプログラムしてくれるサービスです。
キュットブル
クッションに座るだけで骨盤底筋を振動させる尿漏れ対策商品です。
骨盤底筋をサポートするショーツ
トレーニングの為に時間を使わず誰にも気付かれず、毎日履くだけで気軽に骨盤底筋をサポートする下着です。
ランジェリーライナー(尿漏れ吸水パッド)
従来からあるランジェリーライナーも、最近は薄型でムレにくくなっていたり、消臭効果もあり進化しています。
吸水サニタリーショーツ
日本の各人気メーカーが吸水サニタリーショーツを発売しています。
吸水ショーツ
尿漏れ吸水ライナーやシートが苦手な方や、シートでかぶれやすい方は、吸水ショーツを試してみてはいかがでしょうか。外出時でも気にならず快適に過ごすことができます。
骨盤底筋を鍛える治療
高密度焦点式電磁のマシーンに服を着たまま座るだけで、骨盤底筋が刺激され、筋トレと同じ効果がある最新の治療マシンを日本で導入しているクリニックも増えてきています。
それ以外にも沢山の商品が開発、発売されていますので、自分に合ったトレーニング法や商品を見つけましょう。
尿漏れが改善した人の事例を紹介
尿漏れを改善した方の事例を紹介します。
30代 女性(3人出産)尿漏れから直腸瘤に進行
【悩み】重たい物を持った時やくしゃみをした時に、軽い尿漏れに悩みながら、誰にも相談できずにいました。ある時に排便中に力んだら、膣から何かが出てきた感覚がありました。指で押したら戻りましたが、心配になり病院で診察したところ、「直腸瘤」と診断されました。
直腸瘤とは直腸と膣の間の壁が弱くなり、直腸がポケット状にふくらんで、膣から飛び出してくる状態です。直腸瘤になった最大の要因は出産です。出産によって骨盤底の靭帯や筋膜が損傷することがあり、さらに加齢により、緩みが大きくなり臓器を支えきれなくなります。また腹圧も影響するため、肥満や便秘による排便の息み、激しい腹筋運動、慢性的な咳、重たい物を持つ仕事なども要因になります。
この女性も、出産経験や重たい物を持つことが多く、骨盤底の負担や緩みから、初めは尿漏れの症状だけでしたが、直腸瘤に進んだと思われます。医師からは症状がまだ軽いので、骨盤底筋を鍛えるエクササイズを勧められて、私のところに相談に来ました。
【対策】尿漏れは骨盤底筋が弱く緩みがあるため、腹圧をかけすぎるエクササイズは悪化する可能性があります。最初は上記で紹介した、呼吸の骨盤底筋トレーニングと骨盤底と股関節をほぐして血流の流れを良くするストレッチから始めてもらいました。
約1ヶ月半後には、尿漏れの症状がほとんど改善し、トレーニングやストレッチで便通も良くなり、直腸瘤の症状も改善しているそうです。
今も1人で悩んでいたら、もっと悪化していたかもしれなかったけど、早く骨盤底筋トレーニングを知れて良かったと喜んでもらい現在も継続されています。
症状や改善効果は個人差がありますので、ご自身に合ったトレーニングやケアを見つけましょう。平均2〜3ヶ月で変化を感じる方が多いですが、それ以上にかかる場合もありますので、諦めずに継続しましょう。
尿漏れ対策をして安心してお出かけしましょう!
尿漏れの症状があると、映画に行ったり、旅行に行ったり、長時間のお出かけが心配な方も多いと思います。せっかくのお出かけも気になり、楽しさも半減してしまいますよね。
フェムテック商品を使って対策をしながら、骨盤底筋のトレーニングをして、尿漏れの改善を目指しましょう。またはホームドクターに相談して、ご自身の症状に合った漢方や薬を処方してもらうのもよいでしょう。自分のライフスタイルに合った方法を選択しましょう。
参考文献
日本泌尿器科学会
NHK健康チャンネル https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_335.html
Women”sHealth:https://www.womenshealthmag.com/jp/wellness/a34982614/femtech-item-20200109/